樹脂部品設計10年の技術者が考える、「優れた設計」とは
本記事を読んでいるということは、なんらかの形で工業製品の設計に関わっている方だと思います。メーカーであれば、設計者はもちろんのこと、品質に関わる品質保証部門だったり、新商品立ち上げで開発と密に関わる製造部門の方だったり。
関わる以上は良い製品を発売したいという思いは少なからず持っているはずです。(少なくとも、あえて悪い商品をだそうとする人はいないですよね)
そのような思いの助けになればよいと思い、本記事を書きました。優れた設計とは何か考えてみましょう。
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優れた設計=シンプルな設計
もちろん答えは人それぞれあるので一つではありませんが、私の中ではシンプルであることが優れた設計であると考えます。
設計は大変です。開発・設計部門に在籍していて「仕事が楽だ」などという人はおそらくいないでしょう。
設計は非常に多くの要件を満たさなければなりません。少し例を上げるだけでも、
- 品質
- 製造性
- デザイン
- コスト
- 安全性
- メンテ性
- 特許
- 性能
などなど、挙げればキリがありません。多くの要件をバランス良く成立させ、納期通りに仕上げることが設計者の仕事です。これが簡単なはずはないですよね。
上記のように大変で難易度の高い「設計」という業務をしっかりと完遂するためにも、シンプルな設計にすることはメリットがあります。
どのようなメリットがあるのでしょうか?
単純な形状
機能を追加するのであれば、そのような形状を後からどんどん追加していけば機能を満足する形状が出来上がるでしょう。
しかし、追加していくだけの考えではどんどん複雑な形状になってしまいます。正直な気持ちを書いてしまいますが、複雑にするだけなら誰でも考えることができます。おまけにコストも高くなってしまいます。
逆にしっかり考え抜いて単純な形状にすることができれば、成型に必要な金型を単純な構造に出来ます。単純な金型にすると投資額を安くできますし、部品自体が単純形状であれば単価も安くすることができます。単純形状であれば寸法も安定しやすく、生産性にまで貢献できます。
構成部品を少なく
当然ですが構成部品が少ないほどコストが安くなりますよね。部品が少ないということは不具合の原因となる物自体が少ないということです。しばしば不具合の原因となる部品間の接続が少ないという事ですので、品質も向上します。
部品が少ないとメンテナンスも簡単になります。万が一壊れてしまっても簡単に修理することができれば、買ってくれたお客さんに迷惑をかける期間も短くなりますのでお客さんからの信頼も上がります。
効率良く設計するためには過去設計を組み合わせる
設計・開発はとても難しいうえに納期も短い場合が多いです。効率良い方法で進めていかないとやり切れません。
効率の良い設計方法とはどのような方法があるでしょうか。
私は過去の設計を組み合わせて新しい製品を作ることが効率の良い設計と考えます。
周りの製品を見てみましょう。今まで全く存在しなかった技術ばかりで作られた製品というのは存在しない事が分かるでしょう。大抵の物は既存技術の組み合わせで出来ています。
例えばスマートフォン。通信技術、タッチパネル、電話機能などの組み合わせでできていますが、これらはスマートフォンが無かった時にも存在した技術ですよね。このように技術の組み合わせ方だけで、十分画期的な商品を生み出すことが可能です。
多くの情報を知ることが重要
効率良く、優れた商品を設計するには既存技術の組み合わせで可能です。ということは、いかに多くの既存技術を知っているかで良い設計ができるか決まってきます。
CADの操作方法など基本的なスキルを高めることも重要ですが、最も大事なことはいかに多くの情報を持っているかです。ですので、良い設計ができるようになりたいのであれば、積極的にたくさんの情報を集める事をお勧めします。
一人では限界がある
自ら動いて情報を集める事が重要ですが、一人では限界があります。集めた情報をすべて覚える事も不可能でしょう。
そのような場合にこそ、人に頼りましょう。探せば欲しい情報のプロはたくさんいます。要は誰に聞けばその情報が手に入りそうかだけ知っておけばよいのです。
まとめ
良い設計をするためにはどのような考えで進めればよいか書いてみました。
経験浅い方は、うまく行かない時にセンスがないと自分を責めがちですが、それは違います。情報量が足りないのです。ベテランは圧倒的な情報があるので良い設計ができるのです。
- 良い設計とはシンプルであること。
- 効率良く設計するには既存技術を組み合わせていくこと。
- 良い設計をするにはたくさんの情報を得ること。
まとめると以上3点です。
これらの事を心がけて、早く楽にレベルの高い設計者となっていきましょう。